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世紀末の京大

その八:どうする京都(下)

地元KBS京都放送の「どうする京都21」というテレビ番組に出演中、カメラの死角になっている自分の背後から、アシスタントディレクターがそっとメモを差し出しました。それを見て自分は放送中であったにも拘らず、吹き出しそうになりました。

本番:その弐

ライブ放送ならではの出来事だと思うのですが、メモだと思ったのは実は視聴者からリアルタイムで届いた、面白いけれどお叱りのFaxでした。一番上の所に、某パネリストに酷似した大きな似顔絵が描かれており、「このおっさんしゃべりすぎ」とコメントが付いています。二十歳の女性の方で、青谷がどうしてもっと喋らないのかと、ややお冠の様です。講演などでは、スライドや音楽を多用するので、そういうカーニバル的な演出を期待されていたのかも知れませんが、7人のパネリストと20人あまりの学生の皆さんという大所帯では、なかなか自分のペースに巻き込む事もままなりません。

尻にちょっと火が点いた訳ですが、その後も団塊の世代に切り込むのは大変でした。若い人達が青谷に期待するのは、やはりアメリカの話ですから、Wakelyさんの、アメリカ人やカナダ人が如何にお喋りかとの発言に合わせて、アメリカで見た"Candid Camera"(因みに日本にも昔「どっきりカメラ」という似たような番組が有りました。)の一場面を紹介したり、Johns Hopkins大学に居る知日家かつ親日家の友人の森喜朗首相の「神の国」発言に対するコメントを紹介したりして、サービスに鋭意努めました。

Candid Cameraでは、Senator Tildenとかいう実在しない上院議員の名前をでっち上げ、道行く人に「Tilden上院議員についてどう思われますか」と尋ねます。すると、尋ねられた人達が次から次へと自信満々に、この架空の議員について論評します。「あの人は、ちょっと保守的ですよね」などと水を向けられ、"That's exactly my point."(「わたしが言いたいのは、正にその事ですよ」)と言っているのには、大笑いしてしまいました。日本人なら、「そういう議員は知りません」と正直に言うでしょうし、「不勉強で……….」と謝る人すら出るでしょうから、自信に満ち溢れたアメリカ人の態度は、異文化体験その物です。これは学生さんのみならず、司会者にもかなり受けました。

また、「大好きな日本は、アメリカが一番信頼できるパートナーだと思っている。でも、あんな発言は弁護の仕様が無い」という、上記の友人の「神の国」発言に対する怒りと戸惑いは、スタジオの皆さんの共感を大いに得ました。日本全体が、同じ様に怒り戸惑っていたからでしょう

この様にして、単発的ではありましたが、少しくらいはネタを披露する機会も有って、何とか二時間のスパルタ番組を乗り切ったのでした。但し、番組構成が堅過ぎて、恒例のスケボー披露やキャンディ投げは、とうとう最後まで出来ませんでした。一緒に出ておられたばんばひろふみさんも、ギャラの問題も有ったかも知れませんが、遂に歌わずじまいでした。

ここが問題

ディレクターが顔見知りという気安さも有り、翌日番組内容についてのフィードバックを求められました。提示した反省点の概要は、以下の通りです。

先ず、それなりの専門・地位の人を呼ぶのはよいが、一般大衆の興味からは解離した議論、観念論・概念論が中心のideologyやphilosophy論争に終始しがちになる。

次に、「選挙とは何か、何故投票しなければならないか」という一般的議論か、「若い人達が投票しないのは何故か、どうすれば選挙への興味が高まるか」というより特化された議論か、どちらかに焦点を絞るべきであった。この両者が混在した為、希薄ながら混沌とした内容になった。

更に、教育改革や少年犯罪や景気回復など、もっと具体的・日常的な話題が欲しかった。土曜の夜中(日曜の早朝)なのだから、もっと軽い話題も折り込みながらやるべきだった。「ふざけながらも根は真面目」は関西人(大阪人かな?)の得意技なので。

実は自分も、ミーハー向け(自分自身も含め)の軽い話題を、色々準備していました。今回の総選挙では、イメージキャラクターとして、若者に人気の山田まりあや雛型あきこがポスターになったりテレビに出たりしていました。山田まりあは20歳で初選挙ですが、政治意識が高く、首相の公選制について著書に書いたりしています。雛型あきこは今年母親になるという事で、我が子の未来の為にと選挙の大切さを訴えていました。そして極め付けは吉本興業、ダウンタウンの松本人志の「よう考えて入れる奴の一票をあほの一票が打ち消す」という妙言。「あんな人でもしっかり考えて投票するのか」と、きっと盛り上がったと思います。秘密兵器を出すまでもなく、討論が終わってしまい、本当に残念でした。

後日談

今回、7人のパネリストの中で青谷正妥とばんばひろふみだけがcasual系(ラフな服装)かつvisual系(金髪)で、席が隣同士だった事も有り、番組の前後に親しく御話させて頂きました。

そのばんばさんが、「京都大好きラジオ!」という帯番組の、水曜日のパーソナリティーで、「僕の知人」というコーナーに招待して下さいました。今度は「総選挙」とはうって変った軽い話題の連続で、大文字の送り火の3日前だった事もあり、「御先祖様の霊はどこに出る」とか「京大生てどんなんや」とか、要するに無駄話的雑談でした。討論の時とは全く違う、しかし同じ様に巧みなばんばさんの話術に接して、流石は業界人だと感心してしまいました。話の進め方を中心に、自分の講義や講演で参考になる要素が一杯詰まった20分間でした。そのうえ、ゼミの学生さん達も出演させて欲しいとの、自分の希望も快く受け入れて下さいました。彼等にとって良い経験かつ思い出となるでしょう。

帰り際に「どうする京都21」を振り返って、ばんばさんが、「ほんとに、不思議な経験でしたね。」

『不思議な経験』、それが今回の自分自身の総括でもあるのかも知れません。


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