青谷ホーム

 

はじめに

 

 日本の英語産業の規模は3兆円を優に超すと言われ、英語学校の数は1万校以上、英語関係の検定・資格試験の受験者は毎年500万人以上、英語学習人口は常時1,300万人以上だそうです。これだけ大きな英語市場に支えられている日本の英語教育産業にとっては、今こそ正に我が世の春でしょうが、日本人の多くが投資に見合った見返りを得ているようには、とうてい見えません。英語力という意味では、日本は春どころか冬の時代(氷河期というべきかもしれませんが)を抜け出せないでいます。自分が学生だった30年前、まだ教材も語学学校も少なく英語放送といえばFENFar East Network=極東放送)かVOAVoice of America)のような短波放送しかなかった頃の大学生の英語力と、現在の学生さんのそれを比較するとき、その差の小ささに英語力は教材のみでは身につかない、勉強の仕方に根本的な誤りがあると断言せざるをえません。

 英語の二文字をタイトルに入れさえすれば売れるという現象に後押しされて、巷には英語学習書やいわゆるハウツー本があふれていますが、ここに2つの問題があるのです。まず1つ目は、英語好きや英語のプロの書いた本が多過ぎること。英語が大好きな人は学習そのものが楽しくてしかたがないわけですし、プロの人や英語のプロを目指す人は時間に糸目をつけずに英語漬けともいうべき学習法を実行しているわけですので、「効率の追求」という概念や「嫌な英語でもなんとかモノにする」という感覚が完全に抜け落ちています。僕などは、もともと英語が嫌いなものですから、「英語はこんなに楽しいよ。毎週Time誌を隅から隅まで読みつくして語彙を増やしましょう」なんて言われただけで、ぞっとしますし完全にしらけてしまいます。2つ目の問題は、カジュアルな会話や商談で少々使える程度の英語力養成にしか役立たない方法論が多すぎることです。筆者がアマチュアでも、それ自体は一向にかまわないと思いますが、本人の英語力が乏しかったり目指しているところがカジュアルな会話などでは、グローバリゼーション時代の要求には対応しきれません。21世紀に要求される英語力は日本人には想像もつかないほど高いものなのです。

 この状況を打破するには英語力のある「元英語嫌い」が書いた本、効率追求型だが単なる旅行者レベルの会話ではなく、外交や研究などにでも使用できる高いレベルの英語力を目指す本が必要です。京都大学で英語の講義を担当していた僕は、効率的な勉強法で本物の英語力を目指す学生さんのための適当な教科書や手引書探しに四苦八苦していました。そこで、大阪の朝日カルチャーセンターで英語力養成講座「英語に勝つ。英語で勝つ。」を担当する機会に恵まれたのをきっかけに、本書の執筆を思い立ったのです。

 ここに書かれているのは、学生さんに高い英語力を効率よく身につけてもらうために、僕が30年かかってたどり着いた方法です。そういう意味で、これは英語力をつけるための「英語の勉強力」をつける本なのです。魔法のように短期間でできる方法はありませんが、限られた時間を真に有効に使うために、本書を利用してください。やり方は詳しく説明してあります。後はあなたの努力と根気しだいです。数学を学ぶのに何年もかかっても、何の不思議も感じない人が、英語力だけ促成栽培を求めるのはいかにも理不尽なのではありませんか? 根気よく継続学習に努めてください。ある程度できるようになれば、少しは興味も出てきますよ。僕がこの本を書くのを楽しんだのと同じくらい、読者の皆さんが楽しく読んでくださると大変うれしいですが、ハウツー本ですので、読むだけでなくぜひご自分でお試しになってください。

 僕は英語教育学者ではありませんので、この本は基本的には人に教えてもらったり、本や論文で読んだりした方法のうち、実際に試して役立ったものや学生さんを指導してゆくなかで、有効であるとわかったものの集積です。僕自身は、自分を正しく効率のよい英語学習法の語り部であると考えています。語り部の膨大なデータベースを、理解・消化しやすい形で提供しているつもりですので、どうぞご利用ください。

 なお、本書は教典ではありません。一字一句違えず、書いてあることをそのまま忠実に実行していただく必要などまったくありませんので、自分にあった勉強法を見つける旅への出発点として、また1つの雛形としてこの本を位置づけていただきたいと願っています。

 僕は英語学習者の常備薬にしていただくくらいの高い志で書いたのですが、さて……

 

青谷正妥(あおたに まさやす)